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第15話
僕たちの時間
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 僕たちが知り合ったとき、グズラこと栗沢和夫は自分
 
を仙台市の出身といっていた。もう少し詳しくいえば仙
 
台市に程近い塩竃市(しおがまし)というところらしい。
 
宮城県仙台市ならば誰でも知っている大都市だけれど、
 
塩竃市と聞いてたちどころに「ああ、あそこか」とイメ
 
ージできる人間はそう多くはない。面倒だから仙台市で
 
も良いと判断した。確かにグズラの家が何処にあろうが
 
この溝口屋敷に居住する青年たちの歴史に重大な問題を
 
引き起こすこともなかろう。
 
 グズラの家はその仙台市に暖簾を出す和菓子屋という
 
ことだった。
 
 かなりの歴史を持った旧家らしかったが、これもまた
 
本人の申告によるものでしかない。
 
 グズラはおっとりとした口数の少ない、優しい性格の
 
持ち主に見えた。多分この観察結果は間違ってはいない
 
と思う。
 

 
 グズラがもうひとつ違った一面を持つことにはじめて
 
気付いたのはテツだった。
 
「今日グズラは来るんかのう?」
 
 アルバイトに出ようとする僕をテツが呼び止めた。
 
 初めての夏休みを終えて溝口屋敷に戻ったあの宴席の
 
日から、さらにまた一年以上過ぎた頃のことである。僕
 
たちは皆二年になり、すっかり学生生活にも慣れて、こ
 
れぞ大学生といわんばかりに振舞っていた。
 
 僕を呼び止めたテツの表情はなぜか嬉しそうにニヤニ
 
ヤしていた。
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